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あの頃のままに優しさだけを乗せて紡がれる名前。ねぇ、俺はどんな風に貴方の名前を呼んでたっけ? ―只今休止中
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 見事に咲いたものだ。広大な庭の一番奥の奥、洋の花々に囲まれた中で凛と咲く薄紅の木を見て思う。矜持の高さは持ち主似か、なんて思えば応えるかの様に花弁が舞う。ふわりと素直に落ちていくひとひらを手に取って、このはかなさにあいつを重ねる奴は多いのだろうなと思う。紅と言うには弱い色ですが、と言っていたように確かに俺の深紅に比べれば薄い色だ。けれど、不思議な花なのだ。棘も毒もあるわけではないのに他を拒むことが出来ている。
 この花との最初の記憶は別れ際だ。辛い記憶は比較的奥にしまいがちな俺としては珍しく鮮明に心に残っている。他者には滅多に贈らない自分の庭の花を用意していたせいもあるだろう。けれどそれだけではないことは分かってはいる。共鳴者とは恐ろしい。そっと手渡された鉢植えには小さな苗木。精一杯に生きようと新緑を伸ばしていたあの木がここまでの大樹になってしまった。ここには確かな年月が息づいている。この木の存在を俺以外で唯一知っている海の向こうの弟はこの季節になると頻繁に見に来ては楽しげに笑う。そして言うのだ、なんでこんな館から死角になる場所にこの木を植えたんだい、と。
 歳を経るごとに大きくなったこの花は、はかなさも増しているように思う。満開と言える期間は本当に本当に短くなってしまった。見上げれば一面薄紅の世界。血を薄めてもこんな色は出ないだろう。穏やかな色を帯び、咲き誇る。一度風が吹けばそれはこぼれ落ちて雨の様に降り注ぐ。心が痛みを訴えるのはそれが美しくはかないからでもあるだろう。本質は分かっている。ただ気づきたくないだけで。
 贈りあった花はその名と色のことしか知らない。調べてもいない。きっと向こうもそうだろう。あぁ、俺が贈った深紅は今年も咲いただろうか。あの花は少し特殊で毎年同じ数しか咲かないから扱いが難しいんだ。
 ふわりと落ちゆく花びら。今年も最初で最後の花見が終わる。俺がこの花を見るのはこの一刻だけで良い。満開の薄紅が瞼の裏に焼き付いたらそれだけで。太く逞しい幹に手を添えて、まだ命を感じるのに安心する。瞳を閉じても浮かぶのはこの花の色、ただそれだけ。そして、思うのだ。

 あぁ、死んだ恋の色をしている、と。



花は毎年咲くんです、という話英ver。
これで伝えたい部分が少し伝わったら良いなぁ…。
毎年同じ数しか咲かない薔薇と年月を経て大きくなる桜の対比が英日の全てだと思います、はい。

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