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あの頃のままに優しさだけを乗せて紡がれる名前。ねぇ、俺はどんな風に貴方の名前を呼んでたっけ? ―只今休止中
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 ドイツからの招待状で久方ぶりに出席するパーティーは一体誰の趣味なのか舞踏会という古めかしい形だった。一流オーケストラの奏でる音楽は繊細な音で会場を包み込み、気分はまるで中世。この雰囲気は決して嫌いではない(むしろ好きな位だ)けれど現代の風習とはかけ離れすぎていて少しだけ違和感。目的としていたオーストリアさんのピアノは中々出番が来なくて自然と私の足取りは重くなる。先程ボーイから手渡されたワインを楽しみつつ壁の花を決め込むことにして、一つ溜息。

 「一曲踊っていただけますか、フロイライン?」

 そんな時、私に手を差し伸べたのは、少し古いタイプのスーツを着込んだ銀髪に真紅の瞳を持つ男だった。

 中央のフロアへ躍り出れば視線が集中したのが分かる。忘れていたが目の前の男は顔だけは超一級品なのだ。まして今のこいつは鮮血を零したような紅の瞳に月光を連想させる白銀の髪で、その希少価値といったら一生に一度見れるかどうかという代物である。光の角度によって青く見える燕尾服は上手い具合に調和し(形は少し古いタイプだがそれを自然に着こなしている)彼の活発で狡猾な印象を薄れさせて、今の彼は十分に見るに耐えられるものだった。ステップを踏むたびにふわりと広がる私のイブニングドレスは菫色。大好きなあの人と同じ色で裾は長め、動けばふわりと舞う。そういえばこのドレスも少し古いタイプのような気がする。招待が急だった上に久しぶりのダンスパーティーだからドレスまでじっくり決めていられなかった。ぼんやりと考え事をしつつも体は間違えることなく踊り続ける。数百年の慣れとは凄いもので大体の国ならワルツぐらい目を閉じていても踊れるだろう。ゆえに当事者間の沈黙というのは中々に辛いものがある。私は口を開いた。

 「なんであんたがここに居るのよ?」
 「ここはドイツだぜ?俺が居たっておかしくはねぇだろ?」
 
 流れてくるワルツの定番皇帝円舞曲の荘厳な音色に合わせて囁くように会話をする。ステップ・ターンと綺麗に決めて、こいつにしては完璧なエスコートの中踊るのは中々に楽しい。が、彼がここに、この国にいるということはおかしいことだ。確かにそれはありえないことではないけれど、それはほんの少しの微かな可能性であって(仕事とかね)、この日、つまりは数年前に起こった再統一を記念するパーティーなんかに居れるわけがない。彼の今の上司である北の主は決してこんなことを許さないはずだ。

 「どうゆう気まぐれなのかしらね、あんたがここに居るってことはあいつから許可貰ったんでしょ?」
 「ん?あぁ・・・いや、あいつがんなこと許すわけねぇだろ」
 「って、じゃああんた無断で出てきたの!?」
 「声ががでけぇよ」
 「わかって・・・!」

 驚きで足が縺れてしまった。このまま行けば間違いなく転倒ものだ。あぁ恥ずかしい。なんて思っていたら思いっきり手を引かれてタイミングではないというのにくるりと回される。助けてくれたのだと分かったのは数秒経ってからで、兎にも角にも元通り踊り続ける。

 「あんた、馬鹿なじゃいの?」
 「はは、何とでも言え。おそらく明日あいつに殺されててもおかしくは無いからな」
 「ほんと、・・・ばっかみたい」
 「だってしょうがないだろ、記念すべき日だぜ?しかも最愛の弟の。祝いたいんだよ」

 俺はいつまで祝えるか分からないからな。

 ぼそりと続けられた言葉に私ははっとなる。見上げるとそこにはいつもとかわらない、でもどこか寂しそうな表情があって、自分の軽はずみな言動を少し後悔した。でも、ここで謝るのはなんだか癪なので(いきなりそんな表情をするこいつが悪い)思いっきり足を踏んでやる。

 「って!てめ、ふざけんな」
 「いいざまね、それだけ痛がってるならまだまだ平気よ」
 「さっき助けてやったのに・・・!ったく、足の調子がまだよくないんだ。悪化したらどうしてくれんだよ」

 そんなこと分かっている。傍目から見れば普通に踊っているように見えるだろうけど一緒に踊っていればこいつが足を庇っていることなんてすぐに分かった。そしてその理由は同じ陣営に居たから知っている。こいつは、北の絶対君主のお気に入りだった。そして今でもきっと。異常なほどに真っ白な肌がその証明であるように感じさえする。

 「そんなこと知ってるわよ。そういえばあんたどうやってここまで来たの?いつも彼の視線が付いて回るでしょ?」
 「あぁ、リトアニアんとこでちょっと細工してきた」
 「・・・かわいそうに。今頃胃痛起こしてるわよ絶対」
 「平気だろ。つか、気付いてないんじゃね?抜け出してきたのがリトアニアのとこってだけで書類上ではちゃんとあいつのトコから此処に来たってことになってるし」
 「・・・相変わらずそうゆうところだけは完璧なのね」
 「だろ?俺様は天才だからな」
 「・・・じゃあ招待状は?ここ入るときにチェックがあったじゃない?」
 「・・・スルーかよ。普通に届いてたんだよ、恐ろしいことにな」

 それは確かに恐ろしいわね。ふと気がつけば曲はクライマックスに差し掛かりつつあった。ワルツなんて踊っていれば意外とあっという間なものである。最初にこいつの手を取ったときは若干後悔したけれど、まぁたまにはありかと思って、すこしだけ微笑んだ。「お前が俺のそんな風に前で笑うなんて珍しいな」聞こえてきた声に悪意はなくただ純粋に驚いているようだった。そうかしら?聞き返せばああと言われた。そうかな、うん、そうかもしれない。

 「こうゆうのも、たまには悪くないわ」

 別れ際に囁けば、そうだなという返事。今度いつ会えるかは分からないけど、そのときはまた一緒に踊りましょう?私の気が変わらなかったら、だけどね。





・ギルエリが大好きです。
これも一応露普なので。リメイク第3段。

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