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あの頃のままに優しさだけを乗せて紡がれる名前。ねぇ、俺はどんな風に貴方の名前を呼んでたっけ? ―只今休止中
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友人の、「寒いので独→←普前提の露→普が猛烈に読みたい。読みたい。甘い言葉でじわじわ侵食してくる露様が見たい。」に「なにそれ超見たい。」と返したら「ください!」と返って来たのでちょっと頑張ってみた。





 ロシアの家は無駄に広い。割り当てられた部屋で仕事をしながら過ごす中、今までの生活の中では無かったぼんやりと外を眺めている時間が増えた。窓辺に立って見つめる空は冬場特有の重い色をしている。

「西の空は明るい?」
「っ」

 突然の背後からの声に反射的に振り返る。この時間が増えた事に気づいたのは、その度にこの男が気配無くやってくるからだ。
 もっとも、気配が無いというのは正確ではなく、俺が(俺達東側に取り込まれた国が)ロシアの気配を警戒出来なくなった、というのが正しいようだが。どちらにしても大問題で、ふと気が付いたらロシアが背後にいたなんてことが多々ありすぎて正直疲れている。疲れている理由はそれだけでは無いが。

 「別に普通だぜ?」

 ロシアに向けていた視線を外に戻す。西の空が明るいかなどわかりはしない、ドイツにいるならともかくここはロシアなのだから。他の国は定期的に自国に帰っているようだが、どうにも俺だけは駄目らしい。ふざけんなと理由を聞いたら、だって君は優等生だからね、と言われ、これ以上の反論は認めないという無言の圧力。圧力に屈するのはしゃくだったが、抵抗はロシアの加虐趣味を煽るだけだと流石に学んだし、こうも弱体化してしまえば正直やばい。そもそも体格差からして万全な体調でなければギリギリなのだ。自分で自分の首を絞めるのだけは避けたい。
 昔の俺だったらもう少しまともな抵抗が出来ただろうか。ドイツが成長するにつれ明らかに自分が脆くなってることは気付いていた。が、それでもそれを願ったのは自分だし、後悔はない。あぁ、ドイツ、我が弟。この繋がった空の下、お前の無事と健康を祈っている。

「ねぇ、プロイセンくん」
「なんだよ」

 ふと考え事をしていればロシアはすぐ後ろにいた。これだから気配が分からないのは困るんだ。距離を詰められたことに気づけない。窓硝子に映ったロシアは酷く寂しそうな顔をしている。まぁ俺も似たようなものだが。

「ねぇ、こっち向いて」

 甘い響きなのにとんでもない拘束力を持つ言葉。
 完全に振り返ったところで抱きしめられる。あぁ暖かいな。右肩に押し付けられた頭、柔らかな猫っ毛が首にあたってくすぐったい。ただ突っ立ているだけの自分。背中に回された両腕で閉じ込められている様だとどこか冷静な頭で考える。

「好き、好き、好き」

 耳元で繰り返される言葉。ぎゅ、と強くなる抱擁。寂しいよと言葉無く訴えられて心が揺らぐ。俺は知っているのだ、この孤独と寂しさを。今にも縋り付いてしまいそうな両腕を心の中で叱咤する。

「大好き」

 その声が、目が、動作が、拒みきれなくなったのはいつからだっただろう。最初は触れようとする手すら叩き落としていたはずなのに。あぁ、そうだ。思いだした。俺は途中で気づいてしまったのだ、ロシアに昔の弟を重ねてしまっていることに。
 閉じ込められた腕の中、身動き一つとらない俺。ロシアは右肩に伏せていた頭をあげて俺の顔を覗き込む。

「だいすきだよ、プロイセンくん」

 その紫の優しさの裏に何も無いわけがないと分かっている。けれど、それでも。縋りつきたいと思うくらいにはこの男に絆されてる。あぁ、くっそ。もう戻れるか戻れないかギリギリだという自覚はある。それ以上に戻らなくてもいいかと思っている自分がいることも気付いている。

「ねぇ、ぼくを見て」 

-注ぎ込まれたのは甘い毒。その優しさに溺れる。





頑張った結果どう考えても露→←普になった件。ごめんよ、友人。
最近文字を書いてなかったのでとんでもない駄作だという自覚はある。リハビリしなきゃ。
目の色の話を入れ損ねたのと、独→←普要素が少ないのが反省点。そのうち書き直したい。
とりあえず、鉄は熱いうちに打たないとねという一心で上げてみた。

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 気分が悪い。今の自分の体調も状況もその一言に集約されているようなものだ。まぁ「悪い」などというそんな生易しいものでもないが。
 左手を押さえ込む鎖は重く、動かすたびに嫌な音を響かせ闇を揺らす。壁に繋がっているそれは俺の自由を奪うがこんなものが無くても俺はもう自分の意思で体を動かすことはできないだろう。恐らくは地下牢であろうこの部屋は石畳なせいもあいまって冷え込みが酷い。手足の感覚は痺れを訴えるのみで、もはや体としての機能すら果たしていない。極寒の地での出血と痛みで意識は沈む直前で、時間感覚は失って久しく(今が西暦何年なのかすら分からない。分かるのは冷え込みからして今が秋から冬だということだけだ)最後の記憶は憔悴しきった弟の顔。あぁ、ルーイ。お前は元気だろうか。重くのしかかるこの絶望がお前には無いことを願っている。
 
 「君って結構強情だよね」
 「・・・」
 「合理的な考え方があるってことも分かっててその態度なんだもん。少し感動するよ」

 現れたのは冬の男。二重扉の入り口でいつものように微笑んでいるのだろう。軽やかとも取れる声と優しさを貼り付けた表情で、こいつは俺を見下している。目を開ける力も残ってはいないのであくまで想像だが。そう、確かに俺は分かってはいる。この男の求めているものは自らに対する畏怖と忠誠。例え見かけだけの物だとしても、それを此方の態度に表せばこの闇からは開放される。けれど俺は、その条件を飲むつもりは更々無い。俺が忠誠を誓うのは二人だけ。かつての偉大なる我が王、大王と呼ばれた男と我が最愛の弟、片割れであるルートヴィヒのみだ。それはかつても、そしてこれからも変わることは決してない。

 「何か、用かよ」
 「用というかいつも通りだよ。僕の下につくつもりは?」
 「てめぇも、大概しつ、こいよな。Neinだっつてん、だろ!」

 つぶされた喉で叫ぶ。何年も何十年も続けられた問い。答えも常に同じだ。

 「だよね」
 「・・・・・・・・・?」
 「・・・」
 「どう、した?早く、撃てよ」

 普通なら続くだろう銃声が、無い。 当たり前のようになっていた足への痛みがいつになっても来なかった。痛覚はとっくに壊れたから痛みというよりかは生温い赤い液体が体から溢れ出るという感覚に近いものだが。それが無いなんて、一体どうしたというのだこの北の主は。ゆるゆると瞼を開ければ、暗闇の中ぼんやりと浮かび上がる輪郭は震えていた。それと同時に上から落ちてきた透明な雫。驚きで更に顔を上げて、赤みの強い紫色のその奥を見つめる。それはゆらゆらと寂しげに揺れていて、かつての弟の姿がそこに被った。

 「ねぇ、ギルくん」
 「・・・・・・?」
 「ひとり、は寂しいね」
 「・・・・・・」
 「みんなね、出て行っちゃったんだ」
 「イ、ヴァン・・・・・・?」

 あぁ、最近やけに静かだったのはそのせいか。となると俺の中で何かが消えた感覚があるのも道理だな。終わりとは意外にあっけないものだとと、こうもあっさりしているのかと驚かざるを得ない。そうか、終わりか。ぽつりとつぶやいた一言がやけに重く響いた。
 すっ、と回された腕のその温度は予想よりはるかに温かい。ごめんね、ごめんね。呪文のように耳元で続く呟きに、縋りついてくる様な両腕に。曖昧に浮き沈みする意識は、ただ温もりだけを理解して。よく分からないままに俺はその暖かさを甘受する。

 そして、この温かい腕を振りほどく術など俺はもう知らない。





・友人への捧げ物を加筆修正。といっても大したことはしていない。ザ・ちゅうに。そんでもって実はまだ続いてる露普祭リメイク第4段!

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 底に金箔を沈めたような深い翠。誰よりも森に愛された彼の持つ瞳は夜の木々が奏でるどこまでも澄んだエメラルド。それは光の角度によって多彩な色を魅せる不思議な色合いをしている。その美しい硝子玉の持ち主は今瞼を閉じているので色合いを感じ取ることは出来ないが、かわりに太陽に愛されなかった国独特の白い肌と少しくすんだ金色の柔らかく子供のような髪を梳く。続けて緩やかな曲線の輪郭を撫でれば髪と同じ色をした睫毛がぴくりと揺れたが、起きたわけではないようだった。目の前で眠るこの存在は紆余曲折を経て最近恋人になった存在である。互いに忙しい身なのでこうやって一緒に過ごせることは少なく、そんな恋人と一緒のこの空間から出るのは酷く勿体無いが、彼が起きた時のために朝食を作らなくては。

 ロンドンの空は重く、自分の国のものとは全く異なる存在感を放つ灰色である。上からの緩やかな、けれど確実にかかる圧力に少しだけ溜息。それと同時に止めていた手を動かして、再び料理に意識を戻す。自分流の朝食は俺がこの家に来ると作るものの一つであり、この家の主であるアーサーの数少ないお気に入りの一つでもある。郊外とはいえ朝独特の慌しさが町を支配する中、数歩遅れて見送るかのような気分で喧騒と共存するのは悪くない。
 時間と手間を最小限にした朝食作りはもう終わりそうである。が、それを食べてくれるアーサーが起きてこなくては意味が無い。普段ならばそろそろ起きてくる頃だというのにその気配すら感じられない。古い掛け時計が示す時刻は11時。休日とはいえ流石に起きなくてはまずい時間だろう。気持ちよく寝ている所を起こすのは悪い気もするがここで起こさなければ怒られるのは自分である。それは勘弁願いたい。怒った姿もそれはそれで大変可愛いのだが機嫌を取るのが大変なのだ。

 寝室のドアを開ければ、すぅすぅと安定した穏やかな呼吸音が聞こえてくる。なるべく気配を消して(これから起こすというのに矛盾した動きだが)近づいて、ひょこ、と覗き込めばアーサーは自分が部屋を出た時と殆ど変わらない体勢で眠り続けていた。安心しきった寝顔は彼の幼さを強調していて「熟睡してるねぇ」と思わず声が出た。そこでふと気付く。彼はこんなにも他人の気配に気付かない人間だっただろうか。俺の記憶しているこいつはとにかく人嫌いで、こちらから近づこうものなら猫の様に全身の毛を逆立てて警戒するような、そんな性格ではなかっただろうか。「あれ、俺ってもしかして結構信頼されてたり、する?」呟いた一言は予想以上に部屋に響いて、もぞりと布の塊が動いた。寝返りをうったことで髪が乱れ、露になった額に優しくキスを落とす。額から頬へ、頬から唇へ。「ん・・・」ゆっくりと開かれる瞳を見つめて微笑みを。寝起き特有の少し彩度の落ちた翠が自身を捕らえたのを確認し、「アーサー、起きて」と甘やかな声を注ぎ込む。

「フラン、シス・・・?」
「おはよう、お姫様」

 今日もまた幸せな1日が始まる。





春コミのコピー本を加筆修正。最初は国だったけど、違和感が出てきたので学生っていうか一般人っぽいパラレルに変更。書いた時のテーマは甘く!だったと記憶してます・・・。
 

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 私の唯一とも言える絶対の王が死にました。
 
 あの人の晩年私は忙しくなかなか宮殿のあの人がいる部屋に行くことは叶いませんでした。犬達に囲まれた穏やかな老後はあの人の理想だったかもしれません。私が時折遊びに行くと犬達を撫でながら庭を眺める姿が多かったような気がします。そして私に気がつくとこう言ったものです。「おや、プロイセン、また来たのかい。全く困った子だ。こんなにしょっちゅう私の所に来ては次の王と上手くいってないのかと周りに思われてしまうよ?」と。

 それは事実に近い指摘でした。実は後を継ぐだろう次の王とはあまり上手くいっていなかったのです。というよりも、この人が例外中の例外で上手くいっただけであって、他の王とはどうにも私は上手くいかなかったのです。なぜなら彼らは私を、私たちを腫れもののように扱うのですから。戦争中は例外でした。彼らは私の策略と指揮力を、このときだけは求めます。私が馬に乗って掛ければ彼に続けと高らかに叫び全てを私に任せます。けれど、彼らは私が普段彼らの視界に入ることを酷く嫌がります。私という存在が彼らの頭の中で理解しにくい存在なのでしょう。男のふりをした女の国など他に例がありませんから。この秘密は彼らが王になる直前に知らされます。すると今まで尊敬や信望を孕んでいた眼差しに少々の疑惑がまざるのです。それが私には酷く嫌でした。私は私であって男だろうと女だろうとするべきことは変わりないのです。よく言われました。何故女らしくしないのかと。隣国の様にすれば良いのではないかと。隣国のオーストリアは気高く美しいまさに女性として理想でした。私から見ても彼女は美しく気品に溢れていて、まるでかの有名なオペラの中からあらわれ出たかのような存在でした。けれど私は違うのです。幼いころから剣一本で生きてきました。もちろん、ミンネとして生きた時代はあったのです。白いワンピースを身にまといただ求められるがままに頬笑み輪の中心で踊り歌った頃が。けれどそれだけで私は生きたくなかったのです。怪我をし、時に半死半生で帰ってくる仲間達をただ見守り治療をするだけというのは私には無理でした。私は彼らとは違う存在であるということにすでに気がついていましたから。怪我をしてもすぐ治ることも、この仲間達がいる限り死ぬことが無いことも、私達は気付いていました。だから、「私も剣を持つ」そう宣戦した時、団長はこう言たのでしょう。「ならば私達はお前の為に国をつくろう」と。懐かしい思い出です。腰まであった髪を切り、血を吐くような訓練をしました。歌を歌っていた喉は枯れ、体系は少女のそれから少年の様なそれへと変わりました。私はこの仲間達の一員として戦っていました。だからこそ、あの国に招かれた時、交えた剣で傷だらけになっても、たとえその剣が私の顔を傷つけても彼らは何も言いませんでしたし私も気にしませんでした。それが、国が成り立ち出したころ変わりだし、そして成立するとますますそれは顕著になってしまいました。私は性別というものをあまり意識していません。だって、私は国なのですから。

 今思えば我が王の時は全てが例外でした。あの人は私が初めから女だと気づいていました。それは彼が異性という存在をあまり好んでなかったからなのかもしれませんが、気づいていて、けれどあの人は何も気にしていませんでした。私は久しぶりに女でもなく男でもなくプロイセンという一国として扱われたのがとても嬉しかったのでした。国として恥ずかしくない格好と振舞いをとは散々言われましたが、あの人は私がどのような服を着てもどのような振舞いをしても性別を意識した扱いをしませんでした。唯一の例外と言えば彼が即位してから何年後かの寒い冬の朝の一件です。私の名を持つ青の軍服と白のロングブーツをいきなり手渡されました。そしてあの人はその際に言いました。お前の好みには合わないかもしれないが、と。確かに好みだったかと言えばそうではありません。明らかに女を意識した作りでしたし、戦場を駆けるには少々難がありましたから。けれどそれは彼の美意識という観点からつくられた大切な一着だということが私にはわかりました。だから私は受け取ったのです。もっとも彼の在位中に私がそれ着ることはありませんでしたが。あの人はよく私の知力や知識、策略と言った類を大変に褒めてくれました。二人で執務室で夜通し作戦を練ったのも今では思い出です。もちろんコーヒー片手に優雅にというだけではありませんでしたし、執務室ではなく野戦地であったこともしばしばでしたが。あの人が戦争の才能の持ち主であると同時に芸術的才能を持っていたことは周知の事実であり、実際そのフルートは大変美しい音色でした。私には音楽的価値というものを理解することはできませんが、その音色を聞くととても落ち着きましたし、なんだかほっとしたものです。そう素直に告げるととても喜んでいたように感じました。私は音楽的というか芸術的なものごとというものに関心が有りませんでしたのであの人が私にフルートを教えてくれても全く駄目でした。もちろん、吹けはしますし、楽譜だって読めます。でも、それだけなのです。思えば芸術関係で私はフルートを褒めたこと以外彼と話をしたことはなかったかもしれません。他のことはあんなにたくさん話していたというのに。別枠なのは私の髪ぐらいでしょうか。あの人は何故だか私の髪を美しいとよく言っていました。そこにどんな芸術的意味があるのかは分かりませんでしたが、私は単純に嬉しかったのを覚えています。性別関係無く、というのももちろんでしたが、あの人に美しいと言われるものを私が持っていることが嬉しかったのです。もちろん他の国王にも言われていた言葉でしたが彼らのは裏の意図や続く発言が、だから伸ばして女らしくしなさい、だったので。そんな訳で嫌悪感ばかりが募るものでした。けれどあの人はただ褒めるだけでした。それが言いようもなく嬉しかったのです。手放しでほめられて嫌な人間はいないでしょう。私もそうだったということです。

 私は、今日からその髪を伸ばします。このままだと鏡を見るたびにあの人を思い出してしまいそうなので。そして、この髪を見ても悲しくも辛くもせつなくもならなくなったらまた切ろうと思います。

 あなたとの歴史は決して忘れません。けれど、どうか。このあまりにも人より永く生きる私たちの性と弱さを許して下さい。あなたとの歴史は抱えて生きるには優しすぎて辛いのです。だから一旦置かせていただきます。そうですね、この歳の離れた妹が一人前になるころには、きっと。

 そろそろ筆を置こうと思います。では、またいつか。





 好き勝手設定を放り込んで捏造した。最大の問題は無駄に長いところだと思います。
多分公式絵だと親父の全盛期ごろがロングなんだと思うけど、まぁそこは、ね。
あと勢いで書いたせいか、果たしてこれはにょたりあの世界なのか、それとも普と墺と洪だけが性転換してるのかよくわかんないっていうね。ちなみに私は後者を押したい。
こう、野蛮なイメージのにょぷが手紙や文章を書くときは穏やかな口調だったらいいと思う。
逆に女墺は結構さばさばした文章を書くと良い。文面だけみるとまるで逆な二人。私得。
こうゆう一人称独白系は凄い好き。読むのが特に。書くのは、難しいよね・・・。

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 ドイツからの招待状で久方ぶりに出席するパーティーは一体誰の趣味なのか舞踏会という古めかしい形だった。一流オーケストラの奏でる音楽は繊細な音で会場を包み込み、気分はまるで中世。この雰囲気は決して嫌いではない(むしろ好きな位だ)けれど現代の風習とはかけ離れすぎていて少しだけ違和感。目的としていたオーストリアさんのピアノは中々出番が来なくて自然と私の足取りは重くなる。先程ボーイから手渡されたワインを楽しみつつ壁の花を決め込むことにして、一つ溜息。

 「一曲踊っていただけますか、フロイライン?」

 そんな時、私に手を差し伸べたのは、少し古いタイプのスーツを着込んだ銀髪に真紅の瞳を持つ男だった。

 中央のフロアへ躍り出れば視線が集中したのが分かる。忘れていたが目の前の男は顔だけは超一級品なのだ。まして今のこいつは鮮血を零したような紅の瞳に月光を連想させる白銀の髪で、その希少価値といったら一生に一度見れるかどうかという代物である。光の角度によって青く見える燕尾服は上手い具合に調和し(形は少し古いタイプだがそれを自然に着こなしている)彼の活発で狡猾な印象を薄れさせて、今の彼は十分に見るに耐えられるものだった。ステップを踏むたびにふわりと広がる私のイブニングドレスは菫色。大好きなあの人と同じ色で裾は長め、動けばふわりと舞う。そういえばこのドレスも少し古いタイプのような気がする。招待が急だった上に久しぶりのダンスパーティーだからドレスまでじっくり決めていられなかった。ぼんやりと考え事をしつつも体は間違えることなく踊り続ける。数百年の慣れとは凄いもので大体の国ならワルツぐらい目を閉じていても踊れるだろう。ゆえに当事者間の沈黙というのは中々に辛いものがある。私は口を開いた。

 「なんであんたがここに居るのよ?」
 「ここはドイツだぜ?俺が居たっておかしくはねぇだろ?」
 
 流れてくるワルツの定番皇帝円舞曲の荘厳な音色に合わせて囁くように会話をする。ステップ・ターンと綺麗に決めて、こいつにしては完璧なエスコートの中踊るのは中々に楽しい。が、彼がここに、この国にいるということはおかしいことだ。確かにそれはありえないことではないけれど、それはほんの少しの微かな可能性であって(仕事とかね)、この日、つまりは数年前に起こった再統一を記念するパーティーなんかに居れるわけがない。彼の今の上司である北の主は決してこんなことを許さないはずだ。

 「どうゆう気まぐれなのかしらね、あんたがここに居るってことはあいつから許可貰ったんでしょ?」
 「ん?あぁ・・・いや、あいつがんなこと許すわけねぇだろ」
 「って、じゃああんた無断で出てきたの!?」
 「声ががでけぇよ」
 「わかって・・・!」

 驚きで足が縺れてしまった。このまま行けば間違いなく転倒ものだ。あぁ恥ずかしい。なんて思っていたら思いっきり手を引かれてタイミングではないというのにくるりと回される。助けてくれたのだと分かったのは数秒経ってからで、兎にも角にも元通り踊り続ける。

 「あんた、馬鹿なじゃいの?」
 「はは、何とでも言え。おそらく明日あいつに殺されててもおかしくは無いからな」
 「ほんと、・・・ばっかみたい」
 「だってしょうがないだろ、記念すべき日だぜ?しかも最愛の弟の。祝いたいんだよ」

 俺はいつまで祝えるか分からないからな。

 ぼそりと続けられた言葉に私ははっとなる。見上げるとそこにはいつもとかわらない、でもどこか寂しそうな表情があって、自分の軽はずみな言動を少し後悔した。でも、ここで謝るのはなんだか癪なので(いきなりそんな表情をするこいつが悪い)思いっきり足を踏んでやる。

 「って!てめ、ふざけんな」
 「いいざまね、それだけ痛がってるならまだまだ平気よ」
 「さっき助けてやったのに・・・!ったく、足の調子がまだよくないんだ。悪化したらどうしてくれんだよ」

 そんなこと分かっている。傍目から見れば普通に踊っているように見えるだろうけど一緒に踊っていればこいつが足を庇っていることなんてすぐに分かった。そしてその理由は同じ陣営に居たから知っている。こいつは、北の絶対君主のお気に入りだった。そして今でもきっと。異常なほどに真っ白な肌がその証明であるように感じさえする。

 「そんなこと知ってるわよ。そういえばあんたどうやってここまで来たの?いつも彼の視線が付いて回るでしょ?」
 「あぁ、リトアニアんとこでちょっと細工してきた」
 「・・・かわいそうに。今頃胃痛起こしてるわよ絶対」
 「平気だろ。つか、気付いてないんじゃね?抜け出してきたのがリトアニアのとこってだけで書類上ではちゃんとあいつのトコから此処に来たってことになってるし」
 「・・・相変わらずそうゆうところだけは完璧なのね」
 「だろ?俺様は天才だからな」
 「・・・じゃあ招待状は?ここ入るときにチェックがあったじゃない?」
 「・・・スルーかよ。普通に届いてたんだよ、恐ろしいことにな」

 それは確かに恐ろしいわね。ふと気がつけば曲はクライマックスに差し掛かりつつあった。ワルツなんて踊っていれば意外とあっという間なものである。最初にこいつの手を取ったときは若干後悔したけれど、まぁたまにはありかと思って、すこしだけ微笑んだ。「お前が俺のそんな風に前で笑うなんて珍しいな」聞こえてきた声に悪意はなくただ純粋に驚いているようだった。そうかしら?聞き返せばああと言われた。そうかな、うん、そうかもしれない。

 「こうゆうのも、たまには悪くないわ」

 別れ際に囁けば、そうだなという返事。今度いつ会えるかは分からないけど、そのときはまた一緒に踊りましょう?私の気が変わらなかったら、だけどね。





・ギルエリが大好きです。
これも一応露普なので。リメイク第3段。

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  寒い冬はとっくに始まりを告げている。外に出る気もしないので自宅リビングにて僕はただぼんやりと時間を見送った。つけっぱなしのTVは淡々と情報を流し続け、白銀の外は眩しい光を運び続ける。ソファの上で丸くなって過ごす時間は異様に長い上に、一人の部屋はストーブで暖めているはずなのに窓の向こうの白い世界とは同じくらい冷たく感じてしまってなんだか嫌だった。こうゆうとき誰か居てくれると心強いんだけどなぁ。

 「よう」

 開けていた扉、軽いノックで現れたのは噂をすれば何とやらでギルベルト君。部屋の中だというのに帽子とマフラーをつけたままこちらの様子を窺っている。酷いな、この部屋そこまで寒くないでしょう?視線に気付いたのか軽く肩を竦めた彼は帽子とマフラー、ついでにコートも脱いだ。当たり前のようにそれらをハンガーに掛けて、反対側のソファへと座る。心なしか顔色が悪い。

 「やあ、久しぶり。元気?」
 「おかげさまでな。微熱やらなにやらとは未だに仲良くさせてもらってるさ」
 「ふふ、そっか。大丈夫?」
 「・・・お前は人の心配してる場合じゃないだろうが」
 「うん、そうだね・・・」

 けほっごほっ、と沈黙を嫌うかのように咳がこぼれる。苦しいな。喉の痛みと相まって咳の破壊力は絶大だ。慢性的に体調が悪いのはいつものことだけれど弱っている所に風邪を引いてしまったらしく熱も高い上に嫌な寒気が止まらない。ずり落ちていた布団を引き上げてソファの上で寝返りをうつ。それでも寝心地の悪さは変わらない。ソファで寝てる僕が悪いんだけどね。彼の方を向けば、顔をしかめて困ったように溜息をつかれた。

 「薬は飲んだのかよ」
 「ううん。僕あれ嫌いなんだ」
 「お前その歳で好き嫌いなんてするんじゃねぇよ。飯は?」
 「食べてない」
 「アホか」

 アホだなんて酷いなぁ。だってしょうがないじゃない。体はだるくて起きれないし、食欲だってない。ここ二三日はスポーツ飲料だけで過ごしてきた。それで別に問題はなかったしね。自然と落ちてきた目蓋に逆らうことなく目を閉じる。あぁ、しんどい。もう一度寝てしまおうか。そんなことをぼんやりと考えていると枕元に気配。驚きで目を開けると、それと同時に額に冷たさ。

 「うわ、マジで熱いな」
 「・・・」

 彼の手はとても冷たかった。あぁ、気持ち良い。ってあれ、ギルベルトくんてこんなに体温低かったっけ?僕の疑問は呆れて言葉もでないと言いたげなギルベルトくんから答えを得る。

 「お前が熱いだけだろうが、ったく・・・」

 またずり落ちかけていた布団を掛けなおされて、適当に放置していたペットボトルのゴミが回収される。ついでとばかりにクッションを枕代わりに置かれ、身に着けたままだったマフラーを外された。つけっぱなしだったテレビは消され、眩しかった外からの光はカーテンをかけることによって遮断される。
 それだけでなんだか随分楽になった。
 てきぱきと作業を続ける彼を目で追って、その姿を見つめる。一旦部屋を出て、戻ってきた彼は手に洗面器を持っていた。氷水の入った容器にはタオル。ぎっしりと絞られて額の上に乗せられれば、冷たさがじわじわと広がった。そんなことしなくても冷却シートならそこにあったのに。

 「こうゆうのはこっちの方が効くんだよ」
 「そうゆうものかな」
 「そうゆうもんだ」

 病人に対する博愛なのか、それともただの気まぐれなのかギルベルト君の表情はいつもよりずっと優しい。普段なら決して見せてくれないような穏やかな微笑み。あぁ、彼がいつでもこうして笑ってくれたらいいのにな。まぁ、僕のそばに居る限りそんなことありえないんだろうけど。
 
 「ほれ、寝てろ。後でなんか食うもの持ってきてやるよ」

 その穏やかな視線と声色を母のような、と言ったら彼は怒るだろうか。実際のところ僕たちに母親なんてものは存在しないからあくまでも推測範囲を出ることはないのだけれど。母親のような無条件の優しさに少し似ている気がした。

 …たとえその紅の瞳が自分を見ていないとしても。





・とりあえず過去作品その2。ストック切れた。
殺伐としたものを書こうとしたのになぜかほのぼのに。あれー。
ギルはイヴァン様にちっさいころのルートを重ねてる。
タイトルは石川智晶さんの「Squll」より。個人的露様ソング。

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 ポーンポーンと軽やかな音色に導かれるようにやってきたのは、なんとロシアの私室(の一つ)だった。扉越しから聞こえる曲はエリーゼのためにという無難な選曲だが弾き手の非凡さを感じるには十分な曲だ。

「(意外だな)」

 こうゆう事には興味のない奴なんだと勝手に思っていた、が良く考えればこの国だって芸術には特筆すべき点を多く持つ国なのだ。本人からそんな雰囲気を感じないだけで。
 扉に背を預けて、言われた本人からしてみれば自分だけには言われたくないだろう事を心中で呟いてプロイセンは目を閉じる。音に集中すれば、まだ少し雑さが残っている指使いに気付いてそこが少し可愛かった。作曲者が愛した女性のために作った曲を弾くにしてはその音にはあまりにも寂しさが込められていて、どこかに救いを求めるような響きにまたも意外性を感じる。いつだって音は正直だ。
流れるような音色ながらやはり所々に強引な力を感じて、違和感。聞きなれた音(この場合比較対象でもある)との差は大きく、考えれば誰だってアイツの神々しいまでの音楽に愛された才能に叶うわけがないと、一つ溜息。
 ふと音が切れる。あぁ、もう終わったのか。と自世界に潜り込んでいた意識を外へと傾けた。それと同時に浮遊感。背にしていたドアが開かれたのだと気付いたのは、この部屋の、この家の主の腕の中へすっぽりと収まってしまった後だった。

 「やあプロイセン君」
 「よ、よう」
 
 腕に体を押さえ込まれて、見上げる形で寂しがり屋の弾き手の顔を見れば紫色にイタズラが成功した子供のような幼さが垣間見える。次に何を起こすのか分からない幼さに基づいた未知が若干の恐怖を煽るが生憎とそれに負けるほどやわい神経はしていないので。此方から驚きの表情が完全に消えたのを悟ってかロシアは腕を解いた。その隙に一歩ほど距離をとる。

 「お茶でも飲まない?」
  
 紡がれた一言が意外で、断るタイミングを失った俺はそのまま部屋に連れ込まれた。

 * * *

 「どう?」
 「別に悪くはねえよ」

 出されたのは紅茶、伝統的なロシアンティーというやつだった。やたらにジャムの種類が多いのが気になったが個人の趣味にまで口を出すつもりはない。無難にストロベリーを選べば驚いた顔をされた。この紅茶に何が合うかなんて分からないので適当に選んだのだ。それに元来自分はコーヒー派である。

 「イチゴ、好きなの?」
 「嫌いじゃないな」

 あぁ、でも小さい時のルーイは確か好きだったぜ、と喉元まで出てきた言葉を紅茶を飲むことによって掻き消した。こんなことうっかり喋ってしまったら間違いなく機嫌を損ねてしまう。ご機嫌取りなんて柄じゃないが、機嫌を損ねて後悔するのは自分なのだ。弱体化した自分を更に弱めるようなM要素など俺は持ってないからな。ふーん、とさして気にした様子も無くロシアは紅茶をすすっている。寒い土地に合った温かく甘い飲み物は冷めた体を癒すには十分だった。

「君が来るなんて意外だったよ」
 
 俺はお前が弾けるなんて意外だったよ、と返して紅茶を流し込む。君が、ということは他の誰かが来るのを待っていたのだろうか。もう誰も居ないこの家で。姉も妹も、部下だった3人組も居ないこの家でロシアは一体誰を待っていたというのか。プロイセンは窓から部屋に入ってくる暖かさを表面に纏っただけの太陽の光を睨む。色が変わってからというもの、光にめっぽう弱くなってしまった瞳が煩わしい。っち、と意識せず舌打ちするとロシアは立ち上がって薄いカーテンをかけた。椅子に腰掛ければまた沈黙が降りる。それを破ったのは意外にもロシアの方だった。

 「前はね、弾いてれば誰かしら来てくれたんだ」

 興味を持ったラトビアとか、ビックリしたリトアニアとかね。姉さんは僕の弾くピアノのが好きだって言ってくれたんだよ。特に答えることも無いので俺は紅茶を再び喉に送る。俺の沈黙を肯定ととったらしいロシアは右手に持っていたティーカップを皿の上において再び続けた。

 「だからね、弾いてればまた誰か来てくれるんじゃないかなって思ったんだ」
 

 別に本当に誰かが来てくれることを望んだんじゃなくて、気がまぎれればそれでよかったんだけどね。まさか、君が来てくれるだなんて思わなかった。君、音楽とか興味なさそうだったから。
 勝手に己のイメージを語るロシアに対してプロイセンは互いに考えることは同じかと妙な同族意識をもって応えた。ならばと口を開く。

 「お前さ、調律ちゃんとやってんのか?」
 
 気になっていたことだ。絶対音感など持っていないから長年の勘としか言い様がないが先程の曲の際音のずれを感じた。DとGの音が少し違っていて両方とも少し低かった、そんな気がした。

 「・・・そういえば最近あんまりやってない、かも」
 「だったらちゃんとやっとけ。音ずれてんぞ。多分DとGだ」
 「РеとСольね、分かった」
 
 君ホントに音楽やる人間なんだねぇ、としみじみと呟かれプロイセンは自分の顔が若干引きつったのを感じた。まずい、明らかに何か企んでやがる。飲みきったティーカップを置いていかにしてこの部屋を出るか思索し始めたその直後「ねぇ、プロイセン君も弾いてみてよ」と、とりあえずは予想の範囲内の言葉が音となって届く。

 「いや「ね?」」
 
 にっこりと微笑まれ、拒絶を許さないような強い光のその奥に微かな期待を感じ取ってしまい、そうなってしまえば断ることなど出来なかった。あー、俺あーゆう目に弱いんだよなぁ、となんだか悲しくなってくる。「あんまり期待すんなよ」と一旦前置きし黒の貴婦人の下へ歩く。楽譜なら横の棚だよ、と指された本棚にはぎっしりと楽譜が並んでいた。が、初見などという器用な真似など出来ない俺には要らないものだ。「相変わらず暗譜だけは得意なんですねぇ」どこかのお坊ちゃんの小言が聞こえてきそうだった。
 正直言ってこの鍵盤に触れるのは何世紀かぶりの話である。最近は忙しさと疲労とで音楽と関わることなど無かったし、最愛の弟と別れ、此処に来るまではフルートの方ばかり吹いていた。あぁ、家で勝手に弾きまくっている奴ならいたが。
 ポンポンと軽く鍵盤を叩けば、自らの音の薄っぺらさに嫌気が差す。けれど久しぶりの音になんとなく気分が良くなって、まずは簡単な曲から指慣らし。自らの性格を表したかのように荒々しい弾き方しか出来ない自分だが、親父にみっちり仕込まれたからそこそこは弾けるつもりである。
 そういえばアイツも俺やロシア同様音に心境がそのまま出るタイプで、体調に関してはそれが如実だったことを思い出す。微かな指使いの差から現れる音の違い。表面を幾ら繕っても音の豊かさまでは誤魔化すことなど不可能だ。よく笑ってやったっけな「お坊ちゃん、体調不良には気をつけろよ」と。そういえば、と連想ゲームのように意識は広がっていく。黒白から生まれる音に絡めとられた心は懐かしい顔を思い出させた。
 革命でこの家を出て行った彼女は、無事にお坊ちゃんと出会えたのだろうか。まあ、強いあいつの事だ、向こうが迎えにこれなかったとしても自分で見つけられるだろうが。遠い存在となった(元々近い存在でもないが)若草色を少しだけ、羨ましく思った。
 「向こうで待ってるわ」と歌うような声で鉛色の分厚いカーテンの向こう側へと駆けて行った女。颯爽と飛んでいくようなその姿が本当に羨ましかった。もう自分にはそんなこと出来なかったから。飛んでいく為の翼など当に折れていたから。

 曲のレパートリーがそろそろ限界だと思ったとき、聞こえてきたのはすーすーという穏やかな寝息。ったく何やってんだか、と立ち上がって自分の上着をかけてやる。随分と絆されてしまったものだとプロイセンは一人自嘲した。最初はあれほど嫌っていたというのにいつの間にかその感情は飽和して、こいつの事がほって置けなくなって、そして・・・。変わってしまった色に対する受容がその証明であるような気がした。けれど今更後悔しそうな自分を許すわけにはいかない。だってもう、俺にはこいつしかいないのだから。
 
 「Gute Nacht」
 
 かつて弟にしたように、今では決して自分からすることのない口付けを落として、プロイセンは部屋を出た。


 寝たふりだった部屋の主がその驚きでティーカップを割ってしまったのはまた別の話。




・とりあえず過去作品その1。
甘えられることに弱いプーちゃんと甘えさせてくれる人に弱い露様、っていうのが露普の基本。
んでもって甘え下手なプーと甘えさせ下手な露様も基本。カリグラなプーは公の場ではロシア語でそれ以外はドイツ語を喋ってる感じです。
この二人(特に露様)がピアノを弾けたら可愛いな、という話でした。予想外に墺さんが出張ってる・・・。
 

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 「おはよー!ルート!今日も早いな!」

 庭に水まきをしていると垣根の向こう側から手を振る少年がいた。リュックとサッカーボールを持ったこの少年は毎朝練習がある関係で随分と早くに駆けていく。それに気がついたのはある意味必然だったわけだが、この少年はそんなことは知らないだろう。ついこの間親の仕事で引っ越してきたのだと彼は言った。はかなげな容貌と裏腹によく笑いよく泣く少年で人懐っこい性格なのか毎朝挨拶をかわすうちにすっかり懐かれてしまった。

「あぁ、おはよう。今日も練習か?」
「まぁねー。あ、今度の試合俺スタメンなんだぜ!」
「そうか。では頑張らなくてはだな」
「おう!あ、呼ばれてるから行くな!」
「あぁ」
「じゃ!」

 駆け出す後ろ姿を見送る。その小さな背中が過去に重なる。
 彼とはじめて目が合った時、咄嗟に出たのは「おかえり」という一言だった。彼からしてみたら意味がわからなかったに違いない。けれど彼は不思議そうにしながらも確かに言ったのだ、「ただいま」、と。
 友の方へ駆けて行った少年が振り返って手を振っている。こちらも軽く振り返えせば満足そうに笑ってまた駆けて行った。

 赤い瞳と銀色の髪。あの人の色をもつあの少年は間違えようもなく…


-今度こそ貴方が世界から愛されますように



第二次で死んで消えた兄さんが人として生まれ変わってきたらという話。
入れられなかった裏設定↓
・少年はブランデンブルクから引っ越してきた。
・その前はハンガリーに住んでた。
・朝に庭で水まきをするのは元はギルの習慣

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 最近の煽りを受けて貧血を起こしてまともに意識すら保てていない、そんな自分の奥底でどくりと明確な何かが存在を訴えた。どくりどくりと鼓動を打つそれに合わせて目を開ければ、飛び込んできたのは当たり前だけれど自室の薄暗い天井で、けれどそこに一切の歪みが無いことに違和感を覚えた。
 

(…なんだ?)
 

 むくりと起き上れば体も軽い。驚きに拍車をかけるようのその異常性に気がついた。外が、かなり騒がしい。その騒がしさに気がつけば奥底で暴れる何かを唐突に理解した。それは歓喜、だった。喜びという感情の爆発。それは国として久方ぶりに感じる明確な国民の意志でもあって、壊れかけたこちら側でまだこれほどのエネルギーを持っていたとは思いもしなかった。
 締め切っていた遮光カーテンをあけて窓を開く。おんぼろアパートの2階からは大通りを覗き込めて、それが理由で此処に住んだ。毎朝毎晩見てきたこの路はいつだって灰色に淀んだ空気が流れ込んで生と死の間を右往左往しつつどちらかと言えば死に傾きがちであった。それはある意味自分と常に同調していたわけだが、今夜は違う。人々が各々何かしらを手に持って我先へと駆けていた。その顔は生気に満ちていて、それはどこか帝国成立を祝ったあの頃を彷彿とさせる。
 意外なほど迷うことなく濃紺の軍服を手にとって着替える。今まで着せられていた北国の軍服は適当に放り投げた。しまっていたブーツに履き替えて、走り出す。体は予想以上に軽く、今まで鉛のようだったのが嘘のよう。階段を飛び降りて、走っていく人の流れに身を任せる。心の奥底で暴れていた爆発が全身を支配して叫ぶ。早く、早く!全力疾走でたどり着いた先は予想通り向こう側への入り口である門の前。
 

「…凄ぇ」
 

 呟いた一言は民衆の歓声でかき消された。今この場で大きな流れが起こっているという確信。国であれば誰もが感じたことがあるだろう絶対的な力。歴史が動く瞬間の、爆発。それが偶然か必然か決めるのは数世紀先の研究者達の話であって、今の俺達には関係ないこと。ただ動き出した砂時計は全ての砂が落ちるまで止まらないそれだけは事実。その砂時計が止まった時こそ、運よく生き残り続けた俺の歴史がようやく終わるのかもしれない、なんて考える。
 

 さて、どうしようか。俺に与えられた選択は二つ。このまま流れに身を任せるか、それとも。馬鹿馬鹿しい。今頃考えた所でもうひとつの選択肢がある時点において俺が選ぶのは決まっているのだろう。たかが半世紀、されど半世紀。たった一年で人や街が変わるように国にとって何かが変わるには十分な時間だったらしい。条件反射で着替えたのは無駄足だったということだ。
 

 洪水のような人の流れに逆らって歩く。不思議と歩きにくくないのは俺が国だからか、それとも。背中越しの歓喜の渦は未だ勢いを増すばかり。それは心の側面にあいた小さな穴を埋めてくれるようなそんな気がした。馬鹿な男、別れ際にそう笑った幼馴染の声が脳内で反響して自嘲する。全く馬鹿な男だ、俺は。否定できる要素がありやしない。弟は、ドイツ、は壁の向こう側で俺との再会を待っていてくれるのだろうか。それとも壁を壊してこちら側まで来てくれているのだろうか。
 

 「ごめんな」
 

 思わず口から出た一言は意味を持ちすぎて何に対しての謝罪か分からなかった。

 

 

―音は、消えゆく。



去年の統一おめでとうに間に合わなくて放置してたのを書きあげた。私に時事ネタは難しい。
オンリーお疲れ様でした。
 

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「汝その生に悔いはないのか?」
「無いな」
 そんな下らないものがあったら戦ってなどいないだろう。俺は決めたのだ、こいつに全てを掛けると。己の持てる全てを注ぎ込むと。分裂の時が終われば、繁栄が導かれるだろう。そしてそこに君臨すべき王は決して自分ではない。王になるべきは我が最愛の。
 たとえその先にあるものが己にとって価値の無いものだとしても、己には関係のないものだとしても、俺はこの子供の未来が安泰ならば構わない。

 我が王が己を「兄」慕ったその瞬間から、俺は自らの消滅を覚悟して今ここに居るのだ!


―おそらくは愛と言われるもの



・兄さん記念。時間軸は多分普仏戦争後ぐらい?
多分去年の兄さん記念に書いたもの。発掘したので上げてみる。

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