あの頃のままに優しさだけを乗せて紡がれる名前。ねぇ、俺はどんな風に貴方の名前を呼んでたっけ? ―只今休止中
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同士達が一人二人と少なくなり始めた頃。しばしば手足の先が疼くような痛むようなそんな感覚に襲われるようになった。それは時に痛みを伴ったが、気にすることはしなかった。何せこの先は分かりきっていたので。黒みがかり皮膚が爛れた手を説明するのが面倒だから手袋を着けた。着け慣れた黒皮のそれは手にしっくりきたんだろう。大して感覚は残って無かったが、日常生活に支障は無かった。足は靴でいくらでもごまかせた。手袋をつけだした頃、ロシアが不思議そうな顔をした。
「ねぇプロイセンくん。なんで家の中でも手袋つけてるの?」
「別に理由なんてねぇよ」
「ふーん、ならいいよ」
それ以上の詮索は無かった。勘が良いのか興味が無いのか必要以上のことに口をだしては来ないし、馴れ合いもない。思いの外ロシアの隣は居心地が良かった。
「手、冷たいね」
それから少しして。書類を渡す時に言われた一言。やはりロシアは勘が良いらしい。確信がある目をしている。分かっていながら、こちらの動きを伺っている。面倒な男だ。だが言い逃れの道を残している辺り面倒なことが嫌いな面倒な男なのだろう。
「手袋が冷たいだけだろ」
言い放つと「そう」とロシアは呟いた。自身の想像が当たっていたのを理解した、そうゆう目に変わっていた。あぁ、これだから。勘がいいやつは嫌いなんだ。
「…どうしてほしい?」
嫌な笑顔だ。悪戯を思い付いた子供のような、それにしてはあくどい顔をしている。
「随分と上から目線なことで」
「…掻き回してもいいんだ?」
それはあれか、「これ」をではなく、俺の精神をか。この期に及んで良い趣味してやがる。
「断る」
「…なーんだ、残念だなぁ」
お前のSっ気なんぞに付き合ってられるか。大体そこで肯定するやつなんかいるかよ。馬鹿馬鹿しい。
「まぁ、何だっていいけど。色々気をつけてね」
はいどうぞとサインが書かれた書類が戻ってくる。これで終わりだ。存外しっくりきたこいつの隣も今日でお別れ。清々する。
「それじゃあこれから大変でしょう?頑張ってね」
「お前に言われるまでもねぇよ」
「痛みは覚悟の上なんだ?」
「当たり前だ」
「そう…。彼には気をつけて。全く気付いてないよ」
「そのほうが有り難い位だな」
ちょっと鈍いくらいが色々楽なんだよ。一々説明してたら面倒だろ。じゃあな、と背を向けてドアノブに手をかける。
「君ならいつ帰ってきても歓迎だよ」
「冗談だろ?俺は今から帰るんだ」投げ掛けられた言葉。突き返す言葉。扉を開けて部屋を出る。続けようと思った言葉は飲み込んだ。「まぁ、たまになら遊びにきてやらねぇこともない」なんて先を約束する一言など俺が言えるわけないのだ。
門の向こう、弟の姿が見える。近づいて行くほど溶かされる感覚に痛みが湧く。酷い痛みだ。この痛みが嘲笑っている間、どちらに転ぶかはこいつ次第。俺に選択の権利は無い。元に戻るのもこのまま壊死するのも。けれどそれに気付いては欲しくないのだ。無理をすればどこかで綻びが生じる。人も国も一緒だ。
「兄さんっ!」
少し上げなくてはいけなくなった目線、逞しくなった体つき、聞こえる声の力強さ。全てはこのためだったと思えば何もかもこれで良かったのだと思える。それだけで幸せなのだと、この痛みさえ意味があるものだと思えるのだ。
「ねぇプロイセンくん。なんで家の中でも手袋つけてるの?」
「別に理由なんてねぇよ」
「ふーん、ならいいよ」
それ以上の詮索は無かった。勘が良いのか興味が無いのか必要以上のことに口をだしては来ないし、馴れ合いもない。思いの外ロシアの隣は居心地が良かった。
「手、冷たいね」
それから少しして。書類を渡す時に言われた一言。やはりロシアは勘が良いらしい。確信がある目をしている。分かっていながら、こちらの動きを伺っている。面倒な男だ。だが言い逃れの道を残している辺り面倒なことが嫌いな面倒な男なのだろう。
「手袋が冷たいだけだろ」
言い放つと「そう」とロシアは呟いた。自身の想像が当たっていたのを理解した、そうゆう目に変わっていた。あぁ、これだから。勘がいいやつは嫌いなんだ。
「…どうしてほしい?」
嫌な笑顔だ。悪戯を思い付いた子供のような、それにしてはあくどい顔をしている。
「随分と上から目線なことで」
「…掻き回してもいいんだ?」
それはあれか、「これ」をではなく、俺の精神をか。この期に及んで良い趣味してやがる。
「断る」
「…なーんだ、残念だなぁ」
お前のSっ気なんぞに付き合ってられるか。大体そこで肯定するやつなんかいるかよ。馬鹿馬鹿しい。
「まぁ、何だっていいけど。色々気をつけてね」
はいどうぞとサインが書かれた書類が戻ってくる。これで終わりだ。存外しっくりきたこいつの隣も今日でお別れ。清々する。
「それじゃあこれから大変でしょう?頑張ってね」
「お前に言われるまでもねぇよ」
「痛みは覚悟の上なんだ?」
「当たり前だ」
「そう…。彼には気をつけて。全く気付いてないよ」
「そのほうが有り難い位だな」
ちょっと鈍いくらいが色々楽なんだよ。一々説明してたら面倒だろ。じゃあな、と背を向けてドアノブに手をかける。
「君ならいつ帰ってきても歓迎だよ」
「冗談だろ?俺は今から帰るんだ」投げ掛けられた言葉。突き返す言葉。扉を開けて部屋を出る。続けようと思った言葉は飲み込んだ。「まぁ、たまになら遊びにきてやらねぇこともない」なんて先を約束する一言など俺が言えるわけないのだ。
門の向こう、弟の姿が見える。近づいて行くほど溶かされる感覚に痛みが湧く。酷い痛みだ。この痛みが嘲笑っている間、どちらに転ぶかはこいつ次第。俺に選択の権利は無い。元に戻るのもこのまま壊死するのも。けれどそれに気付いては欲しくないのだ。無理をすればどこかで綻びが生じる。人も国も一緒だ。
「兄さんっ!」
少し上げなくてはいけなくなった目線、逞しくなった体つき、聞こえる声の力強さ。全てはこのためだったと思えば何もかもこれで良かったのだと思える。それだけで幸せなのだと、この痛みさえ意味があるものだと思えるのだ。
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