あの頃のままに優しさだけを乗せて紡がれる名前。ねぇ、俺はどんな風に貴方の名前を呼んでたっけ? ―只今休止中
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「…?」もぞもぞと布団の中で動くと隣にあるはずの低めの体温を感じ無くて違和感で目を覚ました。どこいった、あいつ。目覚ましはまだ起きるには早過ぎる時刻を指しており、今日は病院に早く行く訳でもないからちょっとおかしい。まぁ、あまり寝れなかったのだろうと思う。何故なら昨夜実家から電話があったから。俺だって多分実家から連絡なんて来ればそうゆう反応を示すだろう。東海道からしたらあそこは地獄だ。「とーかいどー」ひょいとリビングを覗けばソファーの上で体育座りしているのが見つかる。秋は始まったばかりとはいえ、夜の冷え込みは体を芯から冷やす。薄手のジャージだけじゃまずいだろうと一旦寝室に戻って毛布を持った。ついでに自分の分も持って、キッチンに寄り道。どうせもう寝ないのだからとコーヒーメイカーのスイッチを入れた。リビングのソファーは大きく、その隅っこで縮こまっている東海道はいつもより大分小さく見える。適当に毛布をかけてやって、触れるか触れないかギリギリの所を見極めて座る。こうなるとしばらくしなきゃ復活しないのは長い付き合いの中で把握済みだ。無理に触れて戻そうとすればどうなるのかもまたしかり。「寒いな」返事は期待せずただ呟く。早朝の静けさとこの時期の寒さがあいまって、まるでここだけが隔離されてしまったかのような印象受ける。もしも世界が俺と東海道だけなら、なんて過去に何度も考え込んだものだ。そんな自己満足で幸福な妄想に縋れるほどお互い子供ではなかったけれど。タイミングよくコーヒーメイカーの音が鳴る。少し温まってきた毛布から抜け出すのは微妙だが、仕方ない。マグカップを用意して、一つに大量の砂糖と牛乳を投入する。疲れには甘いものが良いだろう。精神疲労にどれだけの効果があるのかはわからないが、少なくとも普段通りにストレートで飲むよりかは胃に優しいはずだ。「ほい」マグカップをソファー前のローテーブルに乗せる。これだけ精神的に滅入っていても、病院に入れば「心臓外科の若手ホープ、完璧主義の東海道先生」になるんだから凄いと思うわけで。まるでこのソファーの人物と同一人物とは思えない程の変貌を遂げるのだから、流石の俺だって今こうなっているのを知らなければ多分直ぐには気付けないだろう。「すまない」ぼそりと聞こえた謝罪とともに毛布の塊が動く。マグカップを取って一口。その表情が微妙に変わったので、甘くしすぎたか、と思う。「ん、甘いな」「でも胃に優しいよ」「そうか、それもそうだな」東海道はちまちまと飲んでいく。少食なんだよなぁ。もう少し食わした方が良いんだろうかとちょっとだけ考えてみる。「ありがとう、美味かった」ふわりと滅多に見せない微笑み付きの一言。これだけでコーヒーを入れたかいがあるというものだ。こんな表情を見れるのも、落ち込んだ東海道の隣にいれるのも俺だけの特権だと思うと優越感を感じるわけで。「いえいえ、どーいたしまして」空のマグカップを受け取ってキッチンへ。アラームが鳴りだしたのでそれもとめる。さて、朝ご飯でも作りましょうかね。何が起きても一日は始まるし、俺達は必要とされるのだから。
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