あの頃のままに優しさだけを乗せて紡がれる名前。ねぇ、俺はどんな風に貴方の名前を呼んでたっけ? ―只今休止中
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穏やかな午後。珍しく二人揃ったオフ。折角だし買い物に出ようかとも思ったがいまいち乗り気にならなかったようなので家でゆっくりすることにした。昼食を終えて、少し仕事がしたいと東海道が部屋からパソコンを持ってきたのが30分程前。リビングのローテーブルで仕事をする東海道とその後ろのソファーで本を読んでいた俺。カタカタと鳴るキーボード。一定のリズムのそれはいかにも東海道らしい。背筋の伸びた綺麗な姿勢、基本完璧主義で集中力が高い東海道は仕事を始めるとよっぽどの事でないと動じない。そうするとちょっとばかり悪戯がしたくなるもので。
「れい」
ここ何年もこういった普通の時には呼んでいなかった(どんな時に呼んでいるかは察してほしい)下の名前。まぁこんなことじゃ動じないわなと、次の手を考え出そうとしたところで気づく。キーボードの音がしない。
「…」
おや?と思う。残念ながらこちらからは後ろ姿しか見えないが、耳は真っ赤だし、肩も震えている。もしかしなくても大成功だったりするのだろうか。
「れい?」
駄目押しでもう一度。今度は声を少し低くして。
「っ!」
きっ!と振り返った東海道に睨まれる、がしかし顔は真っ赤で涙目と来れば迫力なんかあるわけもなく。何か言おうとしている口はぱくぱくと意味無く動くだけ。
「ごめんごめん」
とりあえずは謝ってみるものの、頬が緩んでいる自覚はある。東海道のほうは結局言葉が出てこなかった様で口を閉じたが、顔は赤く涙目もそのまま。こんな東海道を見るのは久々だ。あぁ、可愛いな、なんて口にしたら拳が飛んできそうな事を思ったりする。
「悪かったって」
ほらこっち来いよ、と自分の横を叩く。素直に従ってくれるあたりも珍しい。ぽすんと隣に落ち着いて体育座り、そのまま膝に顔を埋めてしまった。赤い顔を隠すためなんだろうけど、耳が赤いから意味がない。
「…なんで、いきなり名前など呼ぶんだ」
驚いたではないか、なんて言ってるけど本当は違うよね。まぁ、それもあるんだろうけどただ単に恥ずかしいだけだ、多分。そーいや、こうやって一緒にいるのも久しぶりだし。
「たまにはいいかなぁなんて思ったんだけど、駄目だった?」
ねえ、顔あげてよ。少し下手に、寂しい様に言うのは基本兄気質な東海道には有効だ。
「その顔は狡いぞ…」
本人も自覚はあるようで、少し困った顔になる。それすらも恋人の特権だと思えるんだから大概だ。好きだなぁ、という衝動に任せて肩を抱き、額に口づけをひとつ。「好きだよ」
耳元に口を寄せて囁く。耳弱いんだよね、東海道は。
「私も、だ」
どうやら久しぶりの休暇に舞い上がっていたのは俺だけじゃないってことらしい。細身の体を押し倒し、目を合わせて今度は唇にキス。段々と深くして、くたりと体の力が抜けた所で一旦離す。
「っ、のぞむ…」
甘くなったテノールで呼ばれることのなんと甘美なことだろうか。足りない、と雄弁に語る黒耀石の瞳に同じ様な顔をした自分が映る。たまには良いよな、こんな日も。珍しい零からのキスに深く深く溺れるような愛を感じて、いっそこのまま二人で沈んでしまおうと更にこちらから深く口づけた。
「れい」
ここ何年もこういった普通の時には呼んでいなかった(どんな時に呼んでいるかは察してほしい)下の名前。まぁこんなことじゃ動じないわなと、次の手を考え出そうとしたところで気づく。キーボードの音がしない。
「…」
おや?と思う。残念ながらこちらからは後ろ姿しか見えないが、耳は真っ赤だし、肩も震えている。もしかしなくても大成功だったりするのだろうか。
「れい?」
駄目押しでもう一度。今度は声を少し低くして。
「っ!」
きっ!と振り返った東海道に睨まれる、がしかし顔は真っ赤で涙目と来れば迫力なんかあるわけもなく。何か言おうとしている口はぱくぱくと意味無く動くだけ。
「ごめんごめん」
とりあえずは謝ってみるものの、頬が緩んでいる自覚はある。東海道のほうは結局言葉が出てこなかった様で口を閉じたが、顔は赤く涙目もそのまま。こんな東海道を見るのは久々だ。あぁ、可愛いな、なんて口にしたら拳が飛んできそうな事を思ったりする。
「悪かったって」
ほらこっち来いよ、と自分の横を叩く。素直に従ってくれるあたりも珍しい。ぽすんと隣に落ち着いて体育座り、そのまま膝に顔を埋めてしまった。赤い顔を隠すためなんだろうけど、耳が赤いから意味がない。
「…なんで、いきなり名前など呼ぶんだ」
驚いたではないか、なんて言ってるけど本当は違うよね。まぁ、それもあるんだろうけどただ単に恥ずかしいだけだ、多分。そーいや、こうやって一緒にいるのも久しぶりだし。
「たまにはいいかなぁなんて思ったんだけど、駄目だった?」
ねえ、顔あげてよ。少し下手に、寂しい様に言うのは基本兄気質な東海道には有効だ。
「その顔は狡いぞ…」
本人も自覚はあるようで、少し困った顔になる。それすらも恋人の特権だと思えるんだから大概だ。好きだなぁ、という衝動に任せて肩を抱き、額に口づけをひとつ。「好きだよ」
耳元に口を寄せて囁く。耳弱いんだよね、東海道は。
「私も、だ」
どうやら久しぶりの休暇に舞い上がっていたのは俺だけじゃないってことらしい。細身の体を押し倒し、目を合わせて今度は唇にキス。段々と深くして、くたりと体の力が抜けた所で一旦離す。
「っ、のぞむ…」
甘くなったテノールで呼ばれることのなんと甘美なことだろうか。足りない、と雄弁に語る黒耀石の瞳に同じ様な顔をした自分が映る。たまには良いよな、こんな日も。珍しい零からのキスに深く深く溺れるような愛を感じて、いっそこのまま二人で沈んでしまおうと更にこちらから深く口づけた。
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