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あの頃のままに優しさだけを乗せて紡がれる名前。ねぇ、俺はどんな風に貴方の名前を呼んでたっけ? ―只今休止中
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ものごころついたころから、この音はいつだって側にあった。うちの両親は至って普通の人だったけど従兄弟のカークランド家は揃いも揃った音楽一家。それも天才という形容詞が相応しい才能を持った存在だった。歳が近かったのもあってか俺達双子が仲良くなったのは2つ年上のアーサーで、小さい時はよくアーサーの家である広い屋敷でかくれんぼやら鬼ごっこやらをしたものだった。
この頃はただ純粋にアーサーのヴァイオリンが、その音が好きで、隙をみては弾いて弾いてとせがんだ。アーサーはアーサーで俺は唯一ヴァイオリンを楽しんで披露出来る相手だったんだと思う。神童として華々しくデビューして、両親兄弟からの悪意にすら近いプレッシャーに押し潰されそうな時期だったらしい(って菊は言ってた)から、周りからの評価も視線も何も気にしなくていい自由な演奏を出来たのは俺の前だけだったってことだ。そんな音を聴いていてしまった。それが良いことだったのか悪いことだったのかは正直分からない。俺は白黒はっきりしたいタイプなはずなのにね。
アーサーに憧れてヴァイオリンを始めたのはそれからすぐだ。始めた年齢としては決して遅い訳じゃない。けれど、俺はすぐ壁にぶつかった。
音が違う。
俺が弾きたいのはこんな音じゃない。聞き慣れたあの音に辿り着けない。そして今でもそれは俺を悩ませる。生きた音。その生々しいまでの響きと躍動感。アーサーによって奏でられたその音が耳にこびりついて剥がれない。

「だから俺はヴァイオリンを弾いてると苦しい」

それでも俺は音楽から、この楽器からは離れられないんだ。

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