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あの頃のままに優しさだけを乗せて紡がれる名前。ねぇ、俺はどんな風に貴方の名前を呼んでたっけ? ―只今休止中
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静かな朝だ。昨夜の慌ただしさが嘘の様に、しんと静まりかえっている。早朝特有の朝日の眩しさでもうすぐ通常の診察が始まる頃合いだと理解する。ソファーの上、仰向けで見上げる天井はいつも通り白い。「東海道、大丈夫か?」優しく鼓膜を揺らしたのは山陽の声。疲労からか起き上がることは出来ず、声を出す気力も残ってなかったので、手を挙げることで意志を伝える。大丈夫だと。しかし夜勤からの36時間労働は流石に身体や精神にくるものがある。「お疲れ。もう少しここで休んでて良いってさ」あぁ、良かった。このまま帰ったら恐らく途中で倒れてただろう。それくらい深刻な睡眠不足だ。「上越から聞いたぜ?すげぇ大変だったらしいじゃん」そうなのだ。夜勤は当たり日だったらしく次から次へと人が来て待合室が満員になってしまって、この時期だから扱いの難しいインフルエンザの患者が殆どで大変なのに、そこに交通事故で重傷が3人。人手不足が明らかだったから上越を呼び出して。そのオペが終わったと思ったら、今度は心筋梗塞の患者が運ばれてきてまたオペになった。このオペが酷く難しいもので、結局ここも上越との二人体制で乗り切った。その間にも緊急外来の患者はひっきりなし。重症のインフルエンザの患者には注意をはらいながら、着実に検診して。ようやく落ち着いた時には、日は昇りはじめていた。そして今に至る。あぁ、頭が痛い。夜勤だけであればこれくらいなんともないんだが、その前に大きいオペをこなしていたのが響いた。これで明日から大学病院で研修なのだから、嫌になりそうだ。「あ、東海道。お前飯食った?」「…食べていない。食欲など無い…」「その様子だと昨日から何も食ってないだろ、お前。コーヒーだけ飲んでたな」「…」図星だけに返す言葉が無い。どうしたってこんな日には食欲が湧かないのだ。目の前で一つ命の灯が消えてしまった日は。「ほら、おにぎり作ってきたから、これだけでも食べろって」ほい、と差し出されたのはサランラップに包まれた2つのおにぎり。小さめに作ってくれてるあたり、私用に朝わざわざ作ってきてくれたのだろう。「ん、」有り難くいただくことにする。よっ、という掛け声と共に隣に感じる温もり。暖かく優しい、穏やかさに満ちたそれに触れることでささくれ立った心が落ち着いてゆく。つかの間の休息。この時は長くは続かないとわかっていても、もう少しもう少しと思ってしまう。お疲れ様、お前は頑張ったよ。声にせずとも伝わる気持ちの嬉しさをどう表現すればいいのか。どうかどうかこの感謝の気持ちが触れる指先から伝われば良いと思った。

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