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あの頃のままに優しさだけを乗せて紡がれる名前。ねぇ、俺はどんな風に貴方の名前を呼んでたっけ? ―只今休止中
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ついったで語りすぎたけどまだまだ語りたい。

西野監督、本当に10年間お疲れ様でした。あなたの率いたガンバは強くて魅力的なサッカーで、サッカーの面白さが全て凝縮されていたと思います。私をここまでサッカーに夢中にさせてくれたのはガンバの存在がとっても大きかったと、強く思いました。リーグ優勝も天皇杯もマンUとの試合も、ホントにたくさんのことをガンバのサッカーから学びました。最高のチームだと思ってます。一つの時代が終わるっていうのはこうゆうことなんだなぁ、としみじみ。正直まだ終わってほしくない気持ちの方が強すぎて、もう・・・。本当に退団のニュースがショック過ぎて、授業中なのに泣きそうになったりとかしたけど、本当に本当にお疲れ様でした。ガンバのサッカーが大好きです。
これからも頑張ってください、その一言です。ありがとうございました!

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魔女ミサ。私達魔女が月に一度集まって開催される会議という名の近況報告会。何故こんなことをするかと言えば、生存確認以外の何物でも無い。少し前までは他種族との争いで命を落とすことが多く、それが同盟を結ぶことで解消されたと思ったら、今度は人間共が魔女狩りなんてものをはじめてくれちゃって。魔女は寿命が人よりもずっと永いだけで不死ではない。他種族と争ってた時より死亡率は格段に低いけれど、人間に混ざって生活しているものもいる私達からしたら魔女狩りは中々の問題だ。それを専門職にするハンターなんてのも生まれちゃって、面倒なことこの上ない。大体魔女は魔女狩りの対象だけど魔術師達は対象外なんて理不尽な話だわ。まぁそれよりも普通の人間なのに魔女に仕立てあげられてしまった人達の方が理不尽な思いだったことは確かでしょうけど。現時点での魔女は8人。東が5人、東海と西と九州が1人ずつ。少ないと思われるかもだけれど、そんなものよ。混血を入れればもう少しいるのでしょうけど混血の魔女は魔女とは認められないから。東に人数が多いのは昔から人よりもそれ以外が多い地域だから。ミサには来れないけど部下的存在の魔術師も沢山いるはずだわ。逆に南、西は人が多いものだから、魔女も自然と少ないってわけ。魔女狩りと他種族との戦いで随分死んでしまったってのもあるわね。そして特異なのがほぼ中央を占める東海。ここでは魔女は絶対に一人しか生まれない。そしてここの魔女がクイーンと決まっている。今のクイーンの名は道子。そして私は長いことその補佐をしている。「道子、時間だけど行ける?」「えぇ、大丈夫」ソファーに腰掛けている道子の手に触れる。ありがとう、ふわりと向けられた微笑みと視線は若干合わない。そりゃ、そうよね、道子は目が見えていないのだから。先天的に、というわけじゃない。これは同盟を結んだ時の代償。道子は私達を庇って魔力を使いすぎてしまった。そして、もちろん向こうのリーダー、魔女と敵対してきた異種族たちのトップである吸血鬼の代表者にもそれなりの代償を与えたけれど。それでも許せない。何よりも一瞬の油断で道子を失いそうになった自分が。「陽子、どうしたの?なんだか泣きそうだわ」ぴたりと頬に触れた手は冷え性故に冷たい。けれど、彼女の命を感じることが出来てほっとする。視力を失っても魔力まで失ったわけじゃないから、道子の生活に特別支障があるわけじゃない。けれど夜の湖のような凪いだ深い色をしたあの瞳を見れないのが酷く寂しい。「何でもないわ。さ、行きましょう?皆待ってる」会えば会ったで厭味の応酬なのだけど、まぁそれがお互い元気な証拠といえるから。「えぇ。乃子に会えるのが楽しみだわ」まだ幼く魔女見習い的な乃子はクイーンの道子をとても慕っていて会うと嬉しそうに駆け寄ってくる。それを道子はとても楽しみにしているようで、会う度に新しい魔法を教えている。ちょっと羨ましかったりするのだけど、私も魔女になったばかりの頃は道子に沢山の魔法を教えて貰ったのだから。魔女狩り対策に、新しい魔女探し、吸血鬼達の動向の確認、他にも色々。やることがいっぱい。でも、道子がいる限り私は頑張れるから。この繋いだ手を離さないように、私はこれからも生き
ていく。

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兄さんの達のマンションを出て隣の喫茶店に入る。待たせていた人物は一番奥の席で優雅に紅茶を飲んでいた。「お待たせ」「あぁ、お疲れ。お兄さん何だって?」「ちゃんと分かってくれたよ」「そう、良かったね」うん。ホント良かった。兄さんにまで反対されたらどうしようかと思った。近くにいた店員さんに京浜東北と同じものをお願いしつつ座る。「何はともあれ、これで頑張れるじゃないか」「そうだね」頑張れるよ。俺の家は若干複雑で、俺は三人兄弟の末っ子。すぐ上の兄である今日会った兄さんと父親とは血が繋がっている。が、母親と一番上の兄、九州さんとは全く血の繋がりが無い。俺達の本当の母さんが若くして病に倒れて亡くなり、その後再婚した人とその連れ子ってわけなんだけど、ちょっと色々問題が。父さんも医者なんだけど、母さんが亡くなったら人が変わったように仕事人間になっちゃって、家族なんか二の次。新しい母親も医者なんだけど、この人は俺達の母親も医者で相当優秀な人だったから嫉妬しまくりで。俺達を見ては、特に母親似の兄さんを見ては母さんをけなしたりヒステリックに叫んだり。父さんも父さんで仕事ばっかりで何も言わないし。まぁ、多分父さんも母さんに嫉妬してたのかな、とは思う。それくらい母さんの名前は有名で医療界に知れ渡ってたし、その死が与えた影響は大きかった。心臓外科の東海道道子。それだけで一目置かれた母と違い、父親と今の母親は至って普通の医者だから。もちろん優秀な人達だけど。つまるとこうちの家族は医者一家。両親は今言った通り、九州さん(これは母親の旧姓らしい)は脳外科。だから俺は医者、というか医療系の職業が死ぬほど嫌いだった。そう、だった。でも今は。自分なりに将来のことを考えた今、候補に挙がったのはやっぱりというか、医療系だった。でもやっぱり医者になる気にはなれなくて。色々調べた結果が、薬剤師。けど、医者であることが誇りで医者一家を強調したい両親は猛反対。あの人達、兄さんが医者になるって言ったら妨害ばっかりしたのに。そんな訳で大喧嘩中な俺。心配かけたくなくて兄さんには言わなかったけど。でも。兄さんだけは俺の味方でいてくれる、そんな期待をして会いに行ったのは正しい判断だった。あれだけ医療系を嫌っていた俺が進む道を薬剤師にしたのを無条件で肯定してくれた兄さんはやっぱり俺の兄で、いつだって俺を守ってくれた人だった。あと。「ありがと、京浜東北」「別にお礼を言われるほどのことじゃないよ、僕はただ会いに行ってみれば、って言っただけさ」「うん、でも俺だけだったら会いに行こうとは思わなかったから」忙しい兄さんの邪魔はしたくなかったし、何より山陽さんと暮らし始めてようやく落ち着けたのに、俺のせいでまた実家のことを思い出させることはしたくなかった。そんな時、京浜東北が試しに会いに行ってみれば?と言ってくれて、背中を押してくれたのだ。「紅茶、冷めるよ?」「あ、うん」運ばれてきていた紅茶に手をつけるのを忘れていた。本来俺はコーヒー派なんだけど、京浜東北がかなりの紅茶好きなので最近飲むようになってきた。そんな京浜東北が文句を言わずに飲んでるって事はそれなりに美味しいってことなんだろう。口に含むとアールグレイの香りが広がって確かに美味しい。そういえば、と連想するのは先程飲んだコーヒーの味。砂糖とミルクこそ俺の好みになってたけど、あの味は兄さんの好きな味だ。基本食べ物に関心の無い兄さんが自分で買ったとは思えない。山陽さんって意外に尽くす人だよなぁ、なんて思う。「何、どうかしたの?」「ううん、何でもない」ちょっとにやけてたみたいで京浜東北が怪訝な顔をする。だから、何でもないってば。ただ、兄さんには幸せになってほしい、って思った。ただそれだけだよ。

・おしまい。紅茶は中の人繋がりです。

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「銀座ー?」ふらふらと城内を歩き回る。代々受け継いできたというこの城は中世の雰囲気を色濃く残していて、無駄に広い。皆がいたころでさえ広かったこの家は二人で住むには広すぎて困る位だけど、銀座が大層ここを気に入っているから俺も好き。けど、やっぱり問題はあって、いくら耳を澄ませても匂いを追おうとしても銀座は器用だからあっさりと行方をくらましてしまう。吸血鬼って凄いよなぁ、と言うと、それはあの人だからだよ、と言ったのは同じ吸血鬼の有楽町だ。年の功ってやつ?と言えば、それ本人に言うなよ大変なことになるぞ、だそうだ。実際問題銀座は若造狼男の俺の何倍、何十倍も年上らしい。疑問形なのは銀座が正確な歳を覚えてないから。もっとも俺も自分の歳なんか覚えてなんかないけど。「ぎんざー、どこー?」探しはじめてかれこれ一時間。いつもはこれ位平気なのに何故か疲れてきた。ここまでお気に入りの場所を当たってきたけど、全てハズレ。最後に残ったのは最上階の部屋。ここは窓が大きくて一番空を感じられる。扉の前に立てばギィと勝手に開いていった。居た居た。「やっと見つけたー」「いらっしゃい半蔵門」緩くウェーブのかかった橙の髪。黒のスーツにマントに手袋。あれ、珍しい、正装だ。「なに、なんかあるの??」「特に何も無いよ。ただ、」「ただ?」「今日は新月だからね」「あ、そうだっけ?」通りで疲れるわけだ。新月の日、俺達狼男が普通の人間になる。そしてそれと同時にこの日は吸血鬼は最も力が強くなる日。窓の向こう、いつもなら浮かんでいるはずの月は無く、真っ黒な闇。「おいで?」吸血鬼の目にはその目を見た相手に言うことを聞かせられる力がある。そんなことをしなくても俺は逆らったりしないのに、何故か銀座は血を吸うときいつもその力を使う。あっという間に体の支配権を奪われて一歩一歩近づいていく。すっ、と手を取られ、窓の前に置かれたソファに座らされた。目の前に広がるのは暗闇と硝子に映った俺達だけ。銀座は俺を座らせるといつも後ろに行ってしまう。だから直接は見れないけど、硝子に映っている手袋を外す姿はいつ見ても様になっていて格好良い。「ごめんね、ちょっと加減出来ないかも」ささくれ立った掌が首を撫でる。首や頂にかけての弱い部分に触れられて、ぞくりとする。「良い?」耳に触れるか触れないかという微妙な距離で注ぎ込まれる声。普段からいい声なのにこの時とばかりに低くて甘い声なんだからずるい。しかも支配権を奪われてるから返事なんて出来ないし。「っ、ぁ…」違和感があるのは歯が皮膚を突き破る一瞬だけ。後は快感だけが全身を暴れていく。ごくごくと喉の鳴る音がやけにはっきりと聞こえて、本当に加減されていないのが分かる。あまりの気持ち良さに意識が流されそうなのを何とか耐えるけど、それよりも貧血で倒れそうな勢いだ。でも、ここで意識を失ったら勿体ない。血を飲み終わった一瞬、こちらを覗きこむその表情がいつもの人形みたいな銀座とは別人みたいに優しくなるから。「半蔵門、大丈夫?」「…だい、じょーぶ」ほら、やっぱり。普段は絶対に見せない穏やかな顔してる。「ぎ…んざ…」支配から解放されたとはいえ、呼んだ名前はまだ快感が残っているのがよく分かる甘さ。こんな声俺じゃない。「ぎん、ざ、…だい、んっ」大好きだよ、と続けようと思った言葉はあっさりと口づけに飲み込まれた。体に力も入らないけど、なんとか手が届いた銀座の服の裾を掴む。目の前に髪の色と同じ色の瞳。力なんて使わなくてもこの目に囚われたら逃げられない。「好きだよ」酸欠でぼんやりしてる中囁かれる言葉。うん、俺も大好き。ぎゅう、と抱き着くと安心したように笑うから、俺も嬉しくなる。そうして再び落とされた口づけに俺は身をまかせた。

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「おじゃまします」三つ上の兄が住んでいるのは大学近くのマンションだ。高校時代からの友人の山陽さんとルームシェア。学校の終わった夕方、予備校も今日は休みで、だからこそこの日を選んだ。今日俺が兄さんを訪ねたのには理由があって、それはちょっと複雑なのだ。「よく来たな。迷わなかったか?」通されたのはリビング。コーヒーで良い?と台所で山陽さんの声。はい大丈夫です。「久しぶり、だな」「うん」こうやってちゃんと話すのは本当に久しぶりな気がする。兄さんが家を飛び出してからは全然会う機会も無いし、実家に顔なんて出してくれないから。「はい、どうぞ」「あ、いただきます」運ばれて来たのはコーヒーとお菓子。コーヒー皿にはミルクと角砂糖が二つ。よく俺なんかの好みまで覚えていられるものだ。一緒にコーヒーを飲んだことなんて数回しかないのに。「で、今日はどうしたんだ?急に来たいなんて珍しいな」おそらく兄仕様になっているだろうコーヒーを飲みながら兄が聞いてくる。今日の本題は凄い個人的なことなんだけど、どうしても直接伝えたくて。「兄さん、俺ね、」「?」「薬剤師になろうと思うんだ」空気が止まった。山陽さんは食べようとしたお菓子が今にも手から落ちそうだし、兄さんに至ってはコーヒーカップを落としそうだ。やっぱりそうゆう反応だよね。俺がもし二人なら同じ反応をするだろうし。「それは、お前自身の決断、なんだな?」落としそうなコーヒーカップを皿に戻しながら兄さんが問う。「うん、俺が将来について真剣に考えた結果だよ」「そうか。なら、良いんだ」滅多に見せない優しい表情だ。やっぱり兄さんは俺のことをよく分かってる。ありがとう。「親には言ったのか?」「言ったよ。猛反対されたけど」「だろうな」「だから、俺も大学入ったら家を出ようと思って」「…そうか。それしか無いだろうな」「うん」お金出してもらえるかわからないけど、特待生はとるつもりだから。「もう志望校は決まってるのか?」「一応」「そうか。何か困ったことがあったら言ってくれ。力になる」「うん、ありがとう兄さん」「自分で決めたんだ、きちんと貫け」「うん」「頑張れよ」うん、俺頑張るよ、兄さん。あなたみたいには上手くいかないかもだけど、頑張る。「あ、そうだ。晩御飯食べていかね?」あ、えっと。折角の提案なんですけど「すいません、俺このあと約束が…」「そうなのか?」「うん、ごめんなさい」「じゃあしゃーないな」また今度遊びに来いよ、にっこりと笑った山陽さんと、待ってるぞと穏やかな顔してる兄さん。この人達の様になれたら、と心から思う。人の心の弱さを知っていて、それでも強くあろうとするこの人達のように。大変だろうが、頑張れ。くしゃりと撫でられて酷く安心する。ありがとう、兄さん、山陽さん。

・まだ続くよ。

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「なんで、おまえは、そうなんだよっ!」目の前でにこやかに微笑むのは羊の皮を被った狼、否、狼男。「なんで、と言われましても。それは先輩が一番わかってるんしゃないですか?」にこにこと一見人畜無害そうな笑顔だが、分かる人間からしたら(いや俺は人間じゃないけど)ただの胡散臭い悪巧みの顔でしか無い。話すと長くなるから色々省略するが、俺は所謂吸血鬼というやつで、俺の目の前にいるこいつはさっき言ったように所謂狼男である。こいつが小さい時に拾ったのが俺で、それ以来なんだかんだと世話を焼いてきた。今やすっかり成長して身長も俺と並んで、変身も上手く出来る様になって俺としては嬉しい限りなわけだけれど、ちょっとした問題が発生した。成長したら出て行くと思っていた(狼男というのは本来独立心が強い)副都心が全く出ていく気配が無いのである。今まで幾度となく出て行くように諭したのだが上手い具合にかわされて来た。が、いつまでも俺の側に居させる訳にはいかない。そんなわけで、きちんと話し合おうとこうやってお互いに向かい合っていた訳である。けれど、副都心の考えは変わらず、出て行きたくないと言う。いい加減自立しろと言っても、先輩の側にいるだけで、食料の確保だってちゃんと出来てるし生活も出来てますから、自立は出来てるつもりですよ、と言う。そして最後にはこう言うのだ。「俺は貴方が好きですから、貴方の側を離れたくありません」と。俺が言いたいのはそうじゃなくて、そうゆうことじゃなくて。分かれよ、副都心。「じゃあ何で先輩は俺を無理矢理追い出さないんですか?」「…」追い出すのが手間だから?だったら貴方が俺から離れれば良い。簡単な話です。貴方は吸血鬼で空を飛べる。空中を移動出来る貴方に対して俺はそれを追う手段を持っていない。そうでしょう?副都心は朗々と語る。反論は、出来ない。出来る訳がない。「いい加減認めてください。俺のこと好きですよね?」「…っ!」あぁ、その通りだ。俺はお前の事が好きだよ、本当に、心の底から。だけど、いや、だからこそ。だからこそ!「あぁ、やっぱり速いですね、流石先輩」背後にまわって腕を抑え、伸ばした爪を首に突き付ける。副都心には見えなかったはずだ。速さはこちらの方が圧倒的。「これが最終通告だ、ここから出て行け」低い声を出して、脅す。これで諦めてくれ。じゃないと俺は、俺はっ。やばい、涙が出そうだ。お願いだから、ここで諦めてくれ。俺から離れて行ってくれ。「先輩、忘れてませんか?」この緊迫した状況に似合わない穏やかな声と嫌な笑み。しまった、と思った時にはすでに遅く、背後の壁に両手を頭上で押さえ付けられていた。「貴方は俺よりずっと速いけれど、力は俺の方が上なんですよ」形勢逆転ですね、先輩。耳元で囁かれる声は直接脳に響く。暴れようにも片手押さえられた両手はぴくりとも動かない。腕どころか体さえ、金縛りにあったかのように動かない。「全部俺のせいにしてくれていいですよ」それは甘い毒だ。拒絶しなくてはいけないのに、止めろと声をあげることさえ出来ない。「ね、先輩?」色素の薄い茶色の瞳に俺の色を抜いた金髪と同じ色をした目だけが映る。俺は、昔から自分が怖かった。俺は純血種だからほんの少しで
いいものの、それでも生きていく為には誰かの、何かの血が必要で。そのためには相手を傷つける必要がある。もしも、もしも。俺に血を分けてくれる存在が現れたとして、俺は、これから生きていく中で幾度となくそいつを傷つけるだろう。愛しているなら尚更。好意を抱いた相手の血は吸血鬼にとって最高の味らしいから。幾度となく傷つけて、もし相手に嫌われてしまったら。嫌われて、相手が離れて行ってしまったら。無限に広がる負の思考回路。「先輩、怯えないでください。俺は絶対貴方から離れませんから」ねぇ、先輩。柔らかな声と同時に額に優しい口づけ。あぁ、その仕種は俺がうなされたお前を落ち着かせるためによくやったものだったはず。ふわりと全身の緊張が解けてゆく。両手は解放されて俺は壁を背にしゃがみこんだ。あの小さかった幼子はいつの間にかこんなに大きくなっていた。「何度でも言います。俺は絶対に貴方から離れない」知ってますか?狼男は独立心の強い種族であると同時に忠誠心も強い種族なんですよ。だから先輩、俺は。あぁ、分かってる。お前の気持ちは痛いほど分かってるよ。「俺も、俺もお前を好きだよ、副都心」お前はとっくに覚悟を決めてた。臆病な俺をずっと待っててくれたんだな。「…やっと答えてくれましたね」「遅くなって悪い」そして、待っててくれてありがとう。抱き寄せられた温もりをもう手放すことは出来そうになかった。

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「兄さん、明日時間ある?そっちにいっても良い?」久しぶりの弟からの電話はいやに深刻な響きをもっていた。幸い明日は大学は休み。もっともやるべき課題が山積みなので長く相手をすることは出来ないが、弟もそれを承知のはずだ。「あぁ、大丈夫だ」だが高校生で実家暮らしの弟が、ほぼ家を飛び出したに近い自分に会いに来るなど親があまり喜ぶとは思えない。上の兄ならともかくだ。何かあったのだろうか。「今の弟だよな?どうした?」子機を持ったままぼんやりとしていたら山陽が台所から顔を出した。「明日、弟がうちに来るらしい」「お、めずらしいね。晩御飯用意しておこうか?」「そうだな、頼む」しかし何の用事があるというのだろうか。いや、用事が無ければ来るな、というわけでは無いが、あまりに唐突なのが理解に苦しむ。何かあったのだろうか。「とーかいどー、考えすぎ」眉間のしわ、と人差し指でぐっと押される。「しかし…」「慌てた様子じゃなかったんだろ?急に何かあったわけじゃないだろうし、深く考えんな」「…それもそうだな」確かに山陽の言う通りだ。来るのは弟だけなわけだし。「飯出来たし食べようぜ」「あぁ、今行く」何にしても明日になれば分かることだ。

・続きます。

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これで、漸く全てが揃いました。ここまで来るのに大変な時間を要してしまい、すみませんでした。俺は反対したんですけど、俺一人の力じゃどうしようも無くて。でも、やっと。これでやっと貴方ときちんと別れられる。永い永い間、ありがとうございました。どうか安らかな眠りを。貴方の全てを俺は決して…。

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・サディストの核心を盗む
タイトル=本質の崩壊。医者の人達って真っ当な人は矛盾とか葛藤とかいっぱい抱えて生きてそうだなぁ。

・沈みゆくドールの歌声
笛!を書いたので次はジャイキリの持田さん。私の成長した藤代の理想はこの人。でも多分藤代は怪我とは無縁。

・衰退気分
医者パラレルは山陽さん視点が異様に書きやすいです。若干キャラ紹介を兼ねちゃった感はある。

・背伸びに疲れてヒールを買った
涙の描写をしてみたかったのと、タイトル→背伸びして疲れてもヒールを履いてまでまだ頑張ろうとしてるイメージから。

・外までご案内、その先無関心
医者パラレルは山陽さん(ry)陽東はこんな感じで、次は山陽さんの話を書けたらいいなぁと思います。実家のくだりも別の話で書きたい。

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「…?」もぞもぞと布団の中で動くと隣にあるはずの低めの体温を感じ無くて違和感で目を覚ました。どこいった、あいつ。目覚ましはまだ起きるには早過ぎる時刻を指しており、今日は病院に早く行く訳でもないからちょっとおかしい。まぁ、あまり寝れなかったのだろうと思う。何故なら昨夜実家から電話があったから。俺だって多分実家から連絡なんて来ればそうゆう反応を示すだろう。東海道からしたらあそこは地獄だ。「とーかいどー」ひょいとリビングを覗けばソファーの上で体育座りしているのが見つかる。秋は始まったばかりとはいえ、夜の冷え込みは体を芯から冷やす。薄手のジャージだけじゃまずいだろうと一旦寝室に戻って毛布を持った。ついでに自分の分も持って、キッチンに寄り道。どうせもう寝ないのだからとコーヒーメイカーのスイッチを入れた。リビングのソファーは大きく、その隅っこで縮こまっている東海道はいつもより大分小さく見える。適当に毛布をかけてやって、触れるか触れないかギリギリの所を見極めて座る。こうなるとしばらくしなきゃ復活しないのは長い付き合いの中で把握済みだ。無理に触れて戻そうとすればどうなるのかもまたしかり。「寒いな」返事は期待せずただ呟く。早朝の静けさとこの時期の寒さがあいまって、まるでここだけが隔離されてしまったかのような印象受ける。もしも世界が俺と東海道だけなら、なんて過去に何度も考え込んだものだ。そんな自己満足で幸福な妄想に縋れるほどお互い子供ではなかったけれど。タイミングよくコーヒーメイカーの音が鳴る。少し温まってきた毛布から抜け出すのは微妙だが、仕方ない。マグカップを用意して、一つに大量の砂糖と牛乳を投入する。疲れには甘いものが良いだろう。精神疲労にどれだけの効果があるのかはわからないが、少なくとも普段通りにストレートで飲むよりかは胃に優しいはずだ。「ほい」マグカップをソファー前のローテーブルに乗せる。これだけ精神的に滅入っていても、病院に入れば「心臓外科の若手ホープ、完璧主義の東海道先生」になるんだから凄いと思うわけで。まるでこのソファーの人物と同一人物とは思えない程の変貌を遂げるのだから、流石の俺だって今こうなっているのを知らなければ多分直ぐには気付けないだろう。「すまない」ぼそりと聞こえた謝罪とともに毛布の塊が動く。マグカップを取って一口。その表情が微妙に変わったので、甘くしすぎたか、と思う。「ん、甘いな」「でも胃に優しいよ」「そうか、それもそうだな」東海道はちまちまと飲んでいく。少食なんだよなぁ。もう少し食わした方が良いんだろうかとちょっとだけ考えてみる。「ありがとう、美味かった」ふわりと滅多に見せない微笑み付きの一言。これだけでコーヒーを入れたかいがあるというものだ。こんな表情を見れるのも、落ち込んだ東海道の隣にいれるのも俺だけの特権だと思うと優越感を感じるわけで。「いえいえ、どーいたしまして」空のマグカップを受け取ってキッチンへ。アラームが鳴りだしたのでそれもとめる。さて、朝ご飯でも作りましょうかね。何が起きても一日は始まるし、俺達は必要とされるのだから。

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